燃料を補給する二足戦車(テッド・テラノヴァ)

現在の住居にポスターを貼るのはこれが初めてだ。当初探していたのは画枠の向こうに異世界を展望できるような、空間的広がりを感じられるもの。ZazzleでSFポスターのカテゴリから探していたところ、本来の趣旨とは異なるが惹かれるものを見つけてしまい、結局購入したのがこのポスター。
リンクは日本語サイトの方だが説明文が機械翻訳なので(Zazzleは基本的にみんなそう)、英語サイトから引っ張った説明文と自訳を書いておく。

  • Image of a Bipedal Tank being refueled by a Famo crew in an alternate history.
  • (歴史改変世界でハーフトラックの乗員から燃料補給を受ける二足戦車)

モチーフは第二次世界大戦中のドイツ陸軍。パッと見てドラマが感じられる情景が良い。銃座で哨戒中の兵士、おそらく襲撃されるなら彼が最初に狙われるので緊張感もひとしおだろう。ドラム缶から給油している兵士、砲弾の入った木箱を下ろしている二人の兵士、地図を見ながら相談中の兵士と将校。近寄って彼らの会話を聞いてみたくなる。タミヤあたりが出しているスケールモデルの、出来のいいボックスアートのようだ。
後部が見えているハーフトラックは元の文でFAMOと書かれているので、おそらく史実のSd.Kfz 9そのもの。自分的には戦車よりもこういった車両の存在こそがドイツやアメリカの機械化部隊の象徴だと思っている。Sd.Kfz 9は当時のドイツ最大のハーフトラックで、乗員1名・兵員9名の他に物資を運搬し、さらに後部に戦車や高射砲などを牽引していた。アメリカもM3を始め大量の兵員輸送車を投入していた。日本陸軍も作ってはいたが決定的に不足しており、多くの歩兵が徒歩での移動を強いられ、消耗し、病に倒れていった。こんな悲しい勝負が二度とないことを切に願う。
閑話休題、二足戦車(バイペダルパンツァー)の方はオリジナルの様だ。背の低さゆえに兵士と絵的に絡みやすく、ボトムズのアーマードトルーパーやザブングルのウォーカーマシンを髣髴とさせるサイズだ。鋼の厚みが感じられるリアルな造形、機能が明確なディテール(宮武一貴の対極)が心地よい。膝はよく見えないがおそらく逆関節。この短い足では速力が稼げそうにないので、踵のあたりにギリギリ見える軸が車輪を兼ねてたりすると嬉しい。塗装の剥がれ、錆、弾痕などがいかにもそれっぽい。側面に書かれた「Läufer」は昔風ならロイフェル、今風ならロイファーといった発音だろう。英語でのRunnerに当たり、走る者というストレートなネーミングだ。二足歩行機械にLäuferと名付けるのはよくある発想らしく、他にも立体作品でこれ(Laufer (runner) - Military Modelling)やこれ(RAMM Läufer Scout on Flickr)などが見つかった。
CG作品もここまでディテールに拘れば充分見ごたえがあるんだなと、ポスターを間近に見ながら感心した。ひとつ欲を言えば、地面に戦車の足跡やキャタピラの痕跡があればなお臨場感があっただろう。
作者のサイトもある(作品サイトはこちらブログサイトはこちら)。ブログにも習作など多くの作品が掲載されている。作者はTed Terranova(テッド・テラノヴァ、おそらくペンネーム)、なぜかアイコンはSDマジンガーZ。子供あり。出身は不明だがブログは英文で書かれている。カーネギーメロン大学卒(建築学士)、その後School of Visual Arts(ニューヨーク)、Maryland Institute College of Art(メリーランド)で美術を学んでいる。