吉田蛇作はデス・プリでお気に入りになった作家さん。ベタ展開と思わせて意外な方向へ振り、「そっちかよ!」と何度も突っ込みつつ読むことができる楽しい作風の持ち主だ。成人向け要素やメタ要素に目を眩ませられなければごく健全なオフビート気質のギャグ漫画作家と言っていい。今のところメジャーになりきれない様子だけど末永く描いていてほしい。
本作は講談社の季刊誌ネメシスでの連載作品。巻数を与えられているものの巻末で「第一部 完」となっていたり登場人物に打ち切りと言わせていたので打ち切りと思わせておき、実はその後もちゃっかり連載を継続している。
妄想が具現化するようになった現代社会での騒動を描く、といえばありきたりな設定に聞こえるが、登場人物の無軌道さ、自分勝手さ、勢いが爽快だ。ちょっと盛り上げておいてすぐ台無しにするのが蛇作の流儀だが、逃げてそうなってしまうのではなく最初からそれを目指してやってるので、グダグダになったりはしないし嫌味もない。チャイルドマレスターだの暴徒によるリンチだのが出てきても、陰惨な感じにならずにさらっと流されるところが面白い。現在のペースだと2巻は来年の夏まで出ない‥‥というか季刊誌のこの連載以外に仕事がないと蛇作が干上がってしまう‥‥のだが、無理のないペースでやりたいようにやってほしい、そういう人。
ちなみに表題のノイエゼーレ(neue seele)とは英語に直すとnew soul、新しい魂ということになる。
- 作者: 吉田蛇作
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/08/09
- メディア: コミック
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