漫画

年間、何百冊という漫画を購入している。漫画をジャケ買いして読みたいだけ読めるのは、社会人になって良かったと実感できる最大のメリットかも知れない。当然、外れもあるが、さしたる憤りもない。
漫画は売れている。波があるとしたら現代はほとんどピークであるような気がする。商業ジャンルとして継続的に成立するか怪しいような漫画であってもとりあえず書店には並ぶ。いずれ行き詰まり退潮を迎えるとしても、今を生きる人間としてこの爛熟期のメディアを楽しみ、後の年代の人間に羨ましがられたい。そんな感じで読み漁っている。
日本は漫画のハリウッド、なんて言い方もあるようだが、現実には日本の漫画界における外国人作家の割合が数割といったオーダーになることはないだろうと考えている。映画は膨大なスタッフと複雑な制作システムを使う必要があり、だからこそハリウッドへ行く意味がある。だが漫画は本質的に一人で描けるし、多くても数人のアシスタントを使う程度である。編集も印刷も、日本に頼る必要はない。従ってハリウッドのように、世界中の才能が日本に集まってくるという理由がない。ただマーケットとしての日本の大きさは圧倒的だし、また日本流の漫画は良くも悪くもビジュアル優先だから、日本人好みの絵さえ描ければ重用されていくだろうし、その意味ではやはり中国・韓国の作家が(他国と比較して)有利かと思う。
ここ数年で最も重要な変革は萌え4コマ漫画がマーケットとして成立できた事だろう。そういう漫画自体は数十年前から存在したし、有名なゲームやアニメを主題にした4コマ主体のアンソロジー系の単行本もあったが、オリジナルの萌え4コマ漫画だけで月刊誌がいくつも出ている現状は感慨深い。潰れた雑誌も多いが、芳文社竹書房は今後も鉄板だろう。双葉社が「もえよん」でこけたのは少々意外だったが、地力は充分あると思うので、再度参入する時機を狙っているだろう。ぶんか社も行けそうに思う。一迅社は水準の仕事をしていると思うが、いざというときの受け皿(ファミリー向け・OL向け)に欠けるのが難点か。
萌え4コマに限らず、4コマ漫画の脆弱点はストーリー漫画ほどページが稼げないため単行本の発刊ペースが遅い事で、単行本の売上が雑誌を支えている漫画出版社にとっては痛いところだろう。これは作家にとっても同じことで、中堅以下の4コマ漫画家は兼業作家が多そうだ。
あと2007年はコミックヴァルキリー掲載作品の単行本化が始まった年である。最初の頃のラインナップはエロ残虐系というか、エネルギーと面白さを感じた。作品傾向そのものは目新しいとも言えないが、ニッチに切り込む心意気は評価するし、単純明快さも武器になるだろう。メインストリームにはなりえないにせよ、細々とでいいから続いて欲しいシリーズである。何か間違って海外で大人気なんてこともあるかも知れないし。