カツカレーには水っぽいカレーが合う

不思議なもので、具沢山でコクのある欧風カレーにカツを添えてもあまりありがたみがない。例えば私は松屋ビーフカレーがある種そういった欧風カレーとして極まっていると思うのだが、あれはカツカレー向きではない。オプションでハンバーグを乗せることもあり、松屋カレーもハンバーグもそれぞれ間違いなくおいしいが、それで終わり、ただそれだけの料理だ。
カツカレーに合うのは具の少なくて薄いシャブシャブのカレーなのだ。カツがなかったらただの貧乏カレーなのに、そういうカレーをカツに絡めると魔法が生まれる。
ちなみにカツの方も、例えば柔らかくて肉厚で旨味がしみ出すような上等なカツでは駄目で、肉は薄くていいから衣がしっかりしているカツが良い。
なにも皮肉や修辞で言っているのではない。カツカレーを食べながら自分がどこに惹かれるのかを探った結果を述べている。
カツカレーは、カレーの風味をカツの衣の食感で味わうところに極意がある。みんな大好きなカレーの味を、カレーとしてはありえないサクサクと快い衣の歯ごたえで楽しめるのが最大の魅力なのだ。肉はそれを引き立てるための脇役であれば充分だ。カレーの味も単純なものでよい。具沢山で奥深い味のカレーでは旨さの焦点がぼやけてしまう。
カレーショップの看板を掲げながら水っぽいカレーを出す店の存在価値は、たぶんきっとカツカレーのためだけにある。
そして衣がしっとりしたカツが乗っているコンビニのカツカレーはカツカレーではなく、ただのカツとカレーだ。